これからカメラを始める人によく聞かれるのは、なぜズームできないレンズ「単焦点レンズ」を使うのか、ということです。
これに対しての有効な回答が自分自身の中で思い浮かばなかったのですが、最近ようやく考えがまとまってきました。
結論から言いますと、単焦点レンズとは機構的にズームができない代わりに、ボケ表現の幅がより大きくできる、描写力に優れたレンズです。
各社F1.4やF1.8の大口径レンズや、接写が得意なマクロレンズなど、様々なレンズがあります。
一般的に入門用として用意されるのは、標準ズームと呼ばれるズームレンズキットです。
各社F3.5-F5.6くらいのF値のものが用意されています。
この値はズームする位置によってF値が変化すること意味しており、広角側から望遠側にズームリングを回すごとに、F3.5~F4~F4.5~F5~F5.6とレンズの構造上、F値が徐々に大きくなっていきます。
標準ズーム場合のF値(開放絞りから最小絞りまでの絞りが使える幅)は、最もワイドとなる広角端でF3.5-F22(5+1/3段)、最もテレ側となる望遠端でF5.6-F36(5+1/3段)となり、この値がボケ表現可能な幅ということになります。
これに対して単焦点レンズの場合、F1.4やF1.8などの大口径のレンズが現在の主流です。
F1.4のレンズの場合に使えるF値は、F1.4-F16(7段分)、F1.8のレンズの場合F1,8-F22(7+1/3段)となり、この値が表現の幅、というようにボケ表現可能なF値の幅が、数値上でも明確に広がります。
標準ズームレンズと単焦点レンズとを比較した場合、このレンズ2本では、開放値がF1.4とF3.5で、2+2/3段の差があります。
このF値の差が写真表現の幅の「大きな違い」となってくるのです。
私が考える写真表現の醍醐味(ポイント)は、大きく分けて2つあります。
一つは、広角や望遠など、ズームを使って人の目では判別できない世界を表現すること。
そしてもう一つが、被写界深度(ボケの大きさ)の調節によって、写真でしかできない世界を表現することです。
標準ズームを購入した場合、多くの人がズーム機能に頼ってしまうことで、表現の幅が広がらないということがよくあります。
特に標準ズームレンズキットの場合、被写界深度の浅い表現が難しい(ボケづらい)ため、前述のズームする楽しさ+楽さで留まってしまいがちです。
単焦点レンズが素晴らしい点は、被写界深度の浅い表現から深い表現まで、1本のレンズでできるという点にあります。
ズームができない代わりに、自分が動き回って写す世界を自在に変化させることで、ズームレンズではできない写真の世界が表現できるようになります。
これからカメラを始める人には、ズームレンズだけではなく、単焦点レンズでの写真表現の楽しさを是非味わってみてください。
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